ビジネスと人権

 昨今、「ビジネスと人権」という言葉を目や耳にすることが多くなったかと思います。

 国際社会の様々な動向を受け、2011年、国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が作られました。
 この「ビジネスと人権に関する指導原則」は、3つの指導原則の柱から構成されております。
 ①人権を守る国家の義務
 ②人権を尊重する企業の責任
 ③救済措置へのアクセス
 の3つです。

 以下は、②人権を尊重する企業の責任に関する指導原則の一部です。
11.企業は人権を尊重すべきである。それは、企業が他者への人権侵害を回避し、企業が関与した人権への悪影響に対処すべきことを意味する。
12.人権を尊重する企業の責任は国際的に承認された人権に拠っているが、それは少なくとも、国際人権章典や労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言に規定されている基本的権利に関する原則等に表明されている人権と理解される。
13.人権を尊重する責任は企業に以下の事項を要求する。
 (a)企業活動による人権への悪影響の惹起またはその助長を回避し、惹起した際には対処すること。
 (b)企業活動と直接関連する、または取引関係による製品もしくはサービスに直接関連する人権への悪影響については、企業がその惹起に寄与していなくても、回避又は軽減に努めること。
14.人権を尊重する企業の責任は、企業の規模、業種、企業活動の状況、所有者、組織構成に関係なく全ての企業に適用される。ただし、企業がその責任を果たすためにとる手段の規模や複雑さは、上記の諸要素や企業による人権への悪影響の重大性により異なり得る。
15.企業は、人権を尊重する責任を果たすため、その規模と状況に応じて、以下を含む企業方針と手続を持つべきである。
 (a)人権を尊重する責任を果たすという企業方針によるコミットメント。
 (b)人権への影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明するための人権デュー・ディリジェンス手続。
 (c)企業が惹起させまたは寄与したあらゆる人権への悪影響からの救済を可能とする手続。

 現代では企業活動が活発で、大企業から小企業まで千差万別となっています。企業では人を雇い、取引を行うことがほとんど必然となっています。企業活動では経営者、投資家、企業で勤める者、大企業の下請業者などの様々な利害関係者が登場し、立場の強い者と立場の弱い者とに分かれ、利害関係者の中には人権を侵害されている者も現れております。
 このような状況を踏まえ、国の人権保護の義務だけでなく、企業も人権を尊重する主体であることが求められているわけです。
 それが、「ビジネスと人権に関する指導原則」です。 

 また、指導原則は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成と人権の保護・促進は表裏一体の関係にあるとされています。企業がSDGsに取り組む上でも、非常に人権の尊重は重要になってきます。
 そうした中、令和2年10月16日、関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定されました。
外務省:「ビジネスと人権」に関する行動計画(概要)

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