ミャンマー憲法を読んでみる~第4章①

 第4章「立法」は、「連邦議会」、「人民院」、「民族院」、「管区域・州議会」の4つの節からなっている。

第4章「立法」
連邦議会

連邦議会の構成
第74条
 連邦議会を以下の2院から構成する。
 ⑴第109条にある規定に基づき、郡・人口に基づき選出された議員及び国軍司令官の指名した軍人議員から構成される人民院。
 ⑵第141条にある規定に基づき、各管区域・州から同人数の割合で選出された議員及び国軍司令官の指名した軍人議員から構成される民族院。

議会の統括者及び副統括者
第75条
 議員の宣誓並びに議会の議長及び副議長選出のために開催される最初の会期初日を統括する統括者を「臨時議長」(thabapati)と呼ぶ。連邦議会の統括者及び副統括者をそれぞれ「ナーヤカ(議長)」及び「副議長」と、人民院、民族院、管区域・州議会の統括者及び副統括者をそれぞれ「オゥカタ(議長)」及び「副議長」と呼ぶ。

連邦議会議長及び副議長の責任
第76条
 ⑴人民院の任期の始まる日より30か月間は、民族院議長及び副議長が連邦議会議長及び副議長を務める。残余の任期においては、人民院議長及び副議長が連邦議会議長及び副議長を務める。
 ⑵連邦議会議長が、その職務を遂行し得ない時には、副議長がその職務を行う。

連邦議会議長の職務
第77条
 連邦議会議長は、
 ⑴連邦議会の会議を統括しなければならない。
 ⑵大統領が連邦議会での演説を希望する旨報告した場合、大統領を連邦議会へ招待しなければならない。
 ⑶連邦議会にて協議中の案件に関する詳細な説明を得るため、必要に応じ、この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関を代表する組織もしくは人物を連邦議会へ招待する権利を有する。
 ⑷この憲法もしくは法律で規定された他の任務を遂行する。

連邦議会の会合
第78条
 連邦議会の第1回常会は、人民院の第1回会議が始まった日から15日以内に召集されなければならない。連邦議会議長が連邦議会を召集しなければならない。

第79条
 連邦議会議長は、少なくとも毎年1回連邦議会の常会を召集しなければならない。また、前回召集した常会と次回召集する常会の間の期間が12か月を超えてはならない。

第80条
 連邦議会の場でなされる行為は以下のとおりである。
 ⑴大統領の演説の記録
 ⑵大統領の発言及び連邦議会議長が承認した他の発言の読み上げ及び記録
 ⑶法案の提出、協議及び決定
 ⑷連邦議会が承認した法案に対する大統領の意見に関する協議及び決定
 ⑸連邦議会がこの憲法の規定に従い履行すべき事項に関する協議及び決定
 ⑹連邦議会へ提出された報告書に関する協議、決定及び記録
 ⑺動議の提出、協議及び決定
 ⑻質疑応答
 ⑼連邦議会議長が承認した事項の履行

第81条
 連邦議会の決定、同意及び承認が必要とされる事項に関しては、以下のとおり処理しなければならない。
 ⑴連邦議会が会期中の場合は、その会期において協議及び決定がなされる。
 ⑵連邦議会が会期中でない場合は、直近に開かれる連邦議会において協議及び決定がなされる。
 ⑶当該事項の内、国民の利益のために迅速な対応が求められる事項に関しては、特別国会もしくは緊急国会を召集の上、協議及び決定がなされる。

第82条
 連邦議会議長は、必要に応じ、連邦議会の特別国会もしくは緊急国会を召集することができる。

第83条
 連邦議会議長は、大統領が連邦議会の特別国会もしくは緊急国会を召集する旨通報した場合、これらの国会を可及的速やかに召集しなければならない。

第84条
 連邦議会議長は、連邦議会議員総数の最低4分の1の議員が特別国会の召集を要求した場合、これを可及的速やかに召集しなければならない。

第85条
 ⑴連邦議会の会議は、同会議に出席する権利を有する連邦議会議員総数の過半数が同会議の初日に出席した場合、有効に成立する。また、出席議員が過半数に満たなかったために会議が成立しなかった場合は延期しなければならない。
 ⑵連邦議会の会議は、前項の規定に基づき延期された場合及び有効に成立してさらに延長された場合、同会議に出席する権利を有する連邦議会議員総数の最低3分の1の出席が得られれば有効に成立する。

第86条
 ⑴連邦議会の会議における投票をもって決定すべき事項は、この憲法が他の方法を規定している場合を除き、出席議員の多数決により決定される。
 ⑵連邦議会議長もしくは副議長の投票は認められない。ただし、賛否同数の際には決定票を投じなければならない。

第87条
 連邦議会議長は、議員が連邦議会議長の許可を得ずに連邦議会の会議を15日間連続して欠席した場合、規定された方法に基づく措置を取る旨、当該議員に通知しなければならない。ただし、延期された会議については、上記の15日間に含まれないものとする。

第88条
 連邦議会は、議員の一部に空席がある場合でもその任務を執行する権利を有する。また、連邦議会の会議に出席する権利を有しない人物が連邦議会に出席、投票及び議会の活動を行ったことが後日判明した場合でも、当該会議における決定は無効とならない。

第89条
 連邦議会の職務及び記録は公表されなければならない。ただし、法律もしくは連邦議会の決定に基づき制限される職務及び記録は公表されない。

第90条
 この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関を代表する委員は、連邦議会議長の許可を得て連邦議会に出席している間、自らの機関に関わる法案もしくは他の事項に関する説明及び協議を行う権利を有する。

第91条
 この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関は、連邦議会議長の許可を得たうえで、連邦議会にて当該機関の状況全般に関する説明を行うことができる。

第92条
 ⑴連邦議会議員は、この憲法及び連邦議会法の規定に反しない限り、連邦議会及び連邦議会合同委員会において発言及び投票を自由に行う権利を有する。また、連邦議会議員に対しては、連邦議会及び連邦議会合同委員会での協議・言動を理由として、連邦議会法を除く法律に基づくいかなる措置もとられてはならない。
 ⑵この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関を代表する委員もしくは人物は、連邦議会へ招待された場合、この憲法及び連邦議会法の規定に反しない限り、自由に発言する権利を有する。当該委員等に対しては、連邦議会での発言を理由として、連邦議会法を除く法律に基づくいかなる措置もとられてはならない。
 ⑶前2項で定めた人物が傷害事件を起こした場合、当該人物に対し、連邦議会の規範、規定及び手続並びに現行法に基づく措置がとられなければならない。

第93条
 連邦議会に出席している連邦議会議員又は連邦議会議長の許可もしくは招待により連邦議会に出席している人物を逮捕する必要が生じた場合、連邦議会議長に確実な証拠を提出しなければならない。連邦議会議長の許可を事前に得ることなく、当該議員もしくは人物を逮捕してはならない。

第94条
 連邦議会によって又は連邦議会の許可を得て出版される報告書、文書及び議事録については、裁判の対象となってはならない。

法律の制定
第95条
 ⑴法案は、人民院又は民族院にて審議され両院の承認を得た場合に、連邦議会の承認を得たものとみなされる。
 ⑵人民院及び民族院の間で法案に関する意見が異なった場合、当該法案は、連邦議会に協議し決定するものとする。

第96条
 連邦議会は、付表1にある連邦議会立法管轄事項表に記載されている事項に関し、国家全体又は国家の一部の地域に対し立法権を有する。

第97条
 ⑴連邦議会は法律を制定する際、
  (イ)この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関に対し、当該法律に関わる規則、規範及び規約を公布する権限を委譲することができる。
  (ロ)関係機関もしくは当局に対し、当該法律に関わる通知、命令、指令及び手続を公布する権限を委譲することができる。
 ⑵前項の権限に基づき公布された
規則、規範、規約、通知、命令、指令及び手続は、この憲法及び関係法律の規定と一致しなければならない。
 ⑶人民院及び民族院の双方が規則、規範もしくは規約の廃止又は修正を決定した場合、それは連邦議会によってなされたものとみなされる。
 ⑷規則、規範もしくは規約の廃止又は修正に関し、人民院及び民族院がそれぞれ異なる意見を出した場合には、連邦議会が最終決定を行う。
 ⑸第3項もしくは第4項に基づき、規則、規範もしくは規約の廃止又は修正の決定がなされた場合でも、右決定は当該規則、規範、規約に基づき右決定がなされる以前にとられた措置の有効性に影響を及ぼさない。

その他の事項に関する法律の制定
第98条
 連邦議会、管区域・州議会及び自治地区・地域の指導組織が立法権を有する事項以外の他の事項に関し、立法権は連邦議会に付与される。

連邦領土のための法律の制定
第99条
 連邦議会は、管区域・州議会及び自治地区・地域の指導組織に立法権を付与された事項に関し、連邦領土のために所要の法律を制定する必要が生じた場合には、当該法律を制定しなければならない。

法案の提出
第100条
 ⑴憲法に基づき設立された連邦レベルの機関は、連邦議会が立法権を有する事項の内、自らの機関の運営事項に関する法案を規定の方法に則り連邦議会へ提出する権利を有する。
 ⑵連邦政府のみが提出する権利を有する国家計画、年度予算及び課税に関する法案は、規定の方法に則り連邦議会に提出され、連邦議会にて協議及び決定がなされなければならない。

第101条
 連邦議会のみにおいて協議及び決定がなされると、この憲法により規定されている法案を除き、この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関が連邦議会へ提出した法案は、規定の方法に則り、はじめに人民院もしくは民族院にて協議される。

第102条
 連邦議会は、連邦議会のみにおいて協議及び決定がなされるべき法案を同議会で協議する前に精査する必要が生じた場合、人民院及び民族院の各法案委員会に当該法案を合同で精査させたうえで、規定の方法に則り当該法案を合同法案員会の所見とともに連邦議会へ提出させることができる。

連邦予算案の提出
第103条
 ⑴大統領もしくは大統領から任務を委任された人物は、連邦政府を代表し、連邦予算案を連邦議会へ提出しなければならない。
 ⑵連邦予算案の関連法案は、
  (イ)この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関の長及び委員の給与・手当及び当該機関の支出
  (ロ)連邦が返済する責任を有する債務、当該債務に関わる支出及び連邦の借金に関わる他の支出
  (ハ)裁判所もしくは法廷による判決、命令、宣告にしたがってなされる支出
  (ニ)特定の現行法もしくは国際条約に従ってなされる他の支出に関し、連邦議会にて協議を行う権利が認められる。ただし、当該支出の拒否及び減額は認められない。
 ⑶連邦議会は、多数決で同意を得たうえで、第2項で述べた支出を除く他の支出に関し、賛成、拒否及び減額を行わなければならない。
 ⑷連邦政府は、連邦議会が制定した連邦予算に基づき、必要な措置をとらなければならない。
 ⑸連邦議会が制定した連邦予算に含まれる支出に加えて、追加支出が認められる必要がある場合、上記の手続きにしたがって追加基金分配を制定しなければならない。
 ⑹連邦政府は、連邦議会が制定した追加基金分配に基づき、必要な手続きをとらなければならない。

法的効力を有する命令
第104条
 大統領が大統領令のように法的効力を有する命令を公布した後、同命令の承認を連邦議会へ求めた場合、
 ⑴連邦議会は当該指令の承認の可否を決定しなければならない。
 ⑵連邦議会は当該指令を承認した場合、同指令が引き続き法的効力を有する期間を定めなければならない。
 ⑶連邦議会が当該指令を承認しなかった場合、同指令はその日をもって法的効力を失う。

法律の公布
第105条
 ⑴大統領は、連邦議会の承認を得たもしくは得たとみなされる法案を連邦議会より受領した日から14日以内に当該法案に署名し、法律として公布しなければならない。
 ⑵大統領は、14日以内に法案を自らの所見とともに連邦議会へ送り返すことができる。
 ⑶大統領が、14日以内に法案を自らの所見とともに連邦議会へ送り返さなかった場合もしくは法案の署名及び法律としての公布を行わなかった場合、当該法案は、上述の14日を満たす日に大統領の署名を得たものとみなされ、法律として公布される。

第106条
 ⑴大統領が、法案を連邦議会から受領した日から14日以内に当該法案を自らの所見とともに連邦議会へ送り返した場合、連邦議会は、大統領の所見を吟味したうえで、右所見を踏まえた当該法案の修正の可否を決定することができる。また、連邦議会が大統領の所見に賛成できない場合は、修正前の原文の形で当該法案を承認する決定を下すこともできる。
 ⑵大統領は、自らの所見を踏まえて修正された法案もしくは原文の形で連邦議会により承認された法案を連邦議会から受領した場合、その翌日から7日以内に当該法案に署名の上、法律として公布しなければならない。
 ⑶大統領が、7日以内に法案に署名しなかった場合、当該法案は、上述の7日を満たす日に大統領の署名を得たものとみなされ、法律として公布される。

第107条
 大統領の署名を得た法律もしくは同署名を得たとみなされる法律は、官報にて公表されなければならない。当該法律は、同法律中に個別の規定が含まれていない限り、その公表日をもって発効する。

第108条
 連邦議会は、
 ⑴大統領が提出した国際、地域もしくは二国間の条約・協定の批准、廃止及び脱退に関する決定を下す。
 ⑵すべての国際、地域もしくは二国間条約・協定に関して、連邦議会の承認を得ることなく批准、廃止及び脱退を行う権限を大統領へ委譲したうえで、決定を下す。

※なお、条文は工藤年博編『ミャンマー軍事政権の行方』の補足資料の日本語訳による。

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