ミャンマー憲法を読んでみる~第4章②

第4章「立法」
人民院

人民院の構成
第109条
 人民院の定数は最大440名とし、次のとおり構成する。
 ⑴郡及び人口に基づき選出された議員最大330名
 ⑵国軍司令官が法律に従い指名した軍人議員最大110名

人民院臨時議長の選出
第110条
 ⑴最初の会期が開催された時、人民院議員1名を臨時議長に選出する。
 ⑵臨時議長は、人民院において宣誓しなければならない。
 ⑶臨時議長は、人民院議長及び副議長が選出されるまでの間、人民院会議を統括しなければならない。

人民院議長及び副議長の選出
第111条
 ⑴(イ)人民院議員の中から人民院議長及び副議長を1名ずつ選出しなければならない。
  (ロ)人民院議長もしくは副議長が欠けた場合には、直近の人民院会議において後任を選出しなければならない。
  (ハ)人民院議長がその職務を遂行し得ない時には、人民院副議長が臨時にその職務を遂行する。
 ⑵人民院議長及び副議長の選出方法は、法律でこれを定める。

人民院議長の職務
第112条
 人民院議長は、
 ⑴人民院会議を統括しなければならない。
 ⑵連邦大統領が人民院会議に出席し、演説を行うことを希望する場合、連邦大統領を同会議に招待しなければならない。
 ⑶人民院会議にて審議中の案件に関し、必要と認められる場合、この憲法に基づき設立された連邦レベル機関を代表する委員もしくは人物を同会議に招待し、当該案件につき説明させる権利を有する。
 ⑷この憲法もしくは法律に基づき規定された他の任務を遂行しなければならない。

人民院議長及び副議長の責任と弾劾
第113条
 ⑴人民院議長及び副議長は、次の任期における最初の会議が開かれるまでの間、その職務を遂行しなければならない。
 ⑵人民院議長もしくは副議長は、人民院議長もしくは副議長の地位を辞職した時及び弾劾された時、もしくは議員の地位を失った時及び弾劾された時、もしくは死亡した時にその地位を失う。

第114条
 人民院議長及び副議長の義務、権利及び特権は、法律でこれを定める。

人民院の委員会、理事会及び組織の設置
第115条
 ⑴人民院は、各議員により法案委員会、人民予算委員会、議会権限委員会、政府責任調査委員会を設置しなければならない。
 ⑵人民院は、国防、治安及び国軍に関する事項について、調査報告する必要が生じた場合、期間を定めた上で、人民院の軍人議員による国防・治安委員会を設置しなければならない。また、国防・治安委員会は、必要に応じ、適切な文民議員を委員として選出することができる。
 ⑶立法、行政、少数民族、経済、財政、社会、外交及びその他の事項に関し調査報告する必要が生じた場合、期間を定めた上で、人民院議員による各委員会を設置することができる。
 ⑷人民院は、各委員の人数、義務、権利、特権及び任期について定めなければならない。

第116条
 人民院は、民族院と協議すべき事項が生じた場合、同人数の両院議員
を含む合同委員会を設置し、代表者を選出し権限を与えることができる。合同委員会の任期は、関係する院に報告書を提出した時までとする。

第117条
 人民院及び民族院は、第115条第1項及び第2項に定める委員会が遂行すべき事項を除き、両院において協議する事項に関し、両院議長同士の協議を経て、同人数の両院議長を含む合同委員会を設置することができる。人民院は、当該委員会に含まれる人民院議員を選任し権限を与えることができる。また、当該合同委員会の任期は、関係する院に報告書を提出した時までとする。

第118条
 ⑴人民院は、同院委員会により調査される事項を除く事項を調査する必要が生じた場合、同院議院もしくは適切な国民をもって委員会もしくは組織を設置することができる。
 ⑵人民院は、必要な委員会もしくは組織を設置する際、当該委員会もしくは組織の人数、義務、権利及び特権について定めなければならない。

人民院の任期
第119条
 人民院の任期は、最初の会議が行われた日より5年間とする。

人民院議員の要件
第120条
 以下の要件を満たす者は、人民院議員の被選挙権を有する。
 ⑴満25歳以上である者
 ⑵ミャンマー国民である両親より出生したミャンマー国民である者
 ⑶人民院議員として選出される日まで継続してミャンマー国内に10年間以上居住している者。ただし、国家による許可により合法的に外国へ行っていた期間は、国内に居住していた期間として数えられる。
 ⑷選挙法に定める要件を満たす者

人民院議員の被選挙権をもたない者
第121条
 以下の事項に該当する者は、人民院議員の被選挙権を有さない。
 ⑴違法行為により関係する裁判所の判決を受け懲役刑を受けている者
 ⑵憲法の効力発生の前後を問わず、人民院議員たる資格を喪失するような違法行為により被選挙権の停止処分を受け、当該措置の執行期間が終了していない者
 ⑶精神薄弱者と関係する法律により認定を受けた者
 ⑷生活貧困者として関係する裁判所の認定から解除されていない者
 ⑸外国政府の恩恵を受けている者、外国政府の影響下にある者もしくは外国国籍を有する者
 ⑹外国政府の影響下にある者もしくは外国国籍を有する者の影響を受け得る機会のある者
 ⑺外国の政府もしくは宗教団体及びその他の団体より、金銭、土地、住居、建物、乗物、物品等の援助を、直接もしくは間接を問わず受けている者もしくはこれらの行為に関与している団体の一員
 ⑻政治目的のために宗教を利用して票を獲得すること、票を獲得するよう言及すること、演説すること、公告を行うことをする者、これらの行為を援助・扇動する者、もしくはこれらの行為に関与している団体の一員
 ⑼宗教関係職員
 ⑽公務員。ただし、憲法により召集された議会及び団体に選出・任命された軍人を含む公務員はこれに関係しない。
 ⑾国が所有する金銭、土地、住居、建物、乗物、物品等直接もしくは間接を問わず受益し使用している者もしくはこれらの行為を行っている団体の一員。ただし、次を条件とする。
  (イ)「国が所有する金銭」という語句に関し、国が支給する年金及び国家への功労に対し支給される金銭は含まれない。
  (ロ)「国が所有する金銭、土地、住居、建物、乗物、物品」という語句に関し、国が法律に基づきもしくは義務に基づき使用を許可したもの、もしくは賃貸料を国に納めることにより借用されている国が所有する土地、住居、建物、部屋、乗物、その他の建物及び部屋、国の所有する航空機、鉄道、船舶、乗用車及び物品は含まれない。
 ⑿憲法の効力発生の前後を問わず、人民院議員たる資格を喪失させる選挙に関係する違法行為もしくは選挙法に違反する行為に関与したため、被選挙権の停止処分を受け、当該措置の執行期間が終了していない者

人民院の軍人議員の要件
第122条
 人民院における国軍司令官の指名した軍人議員は、同院における他の議員と同一の資格を満たさなければならない。

人民院の会合
第123条
 人民院の第1回常会は、総選挙開始後90日以内に召集されなければならない。

第124条
 ⑴国家平和開発評議会は、憲法の発効後、人民院の第1回通常国会を召集しなければならない。
 ⑵人民院議長は、この憲法の規定に基づき職務を継続し、次の人民院の第1回通常国会を召集しなければならない。

第125条
 ⑴人民院議長は、人民院第1回常会において、人民院臨時議長の前で付表4のとおり宣誓をしなければならない。
 ⑵宣誓を済ませていない議員は、自らが初めて出席する人民院の会議において、人民院議長の前で宣誓をしなければならない。

第126条
 人民院議長は、少なくとも毎年1回、人民院の常会を召集しなければならない。また、前回召集した常会と次回召集する常会の間の期間が12か月を超えてはならない。

第127条
 人民院の会議において実施する行為は以下のとおりとする。
 (イ)大統領の演説の記録
 (ロ)大統領の発言及び人民院議長が承認した他の発言の読み上げ及び記録
 (ハ)法案の提出、協議及び決定
 (ニ)人民院がこの憲法の規定に従い履行すべき事項に関する協議及び決定
 (ホ)人民院へ提出された報告書に関する協議、決定及び記録
 (ヘ)動議の提出、協議及び決定
 (ト)質疑応答
 (チ)人民院議長が承認した事項の履行

第128条
 ⑴人民院の会議は、同会議に出席する権利を有する同院議員総数の過半数が同会期の初日に出席した場合、有効に成立する。また、出席議員が過半数に満たず会議が成立しなかった場合は延期される。
 ⑵人民院の会議は、前項の規定に基づき延期された場合及び有効に成立して更に延長された場合、同会議に出席する権利を有する同院議員総数の3分の1を超える出席が得られれば有効に成立する。

第129条
 ⑴人民院の会議における投票により決定すべき事項は、この憲法が他に定める場合を除き、出席議員の多数決により決定する。
 ⑵人民院議長及び副議長の投票は認められない。ただし、賛否同数の際には決定票を投じなければならなない。

第130条
 ⑴人民院は、議員が同院の許可を得ずに同院の会議を15日間連続して欠席した場合、定められた方法に則り、当該議員の地位が空席である旨宣言することができる。ただし、延期された会議に関しては、15日間に含まれないものとする。
 ⑵人民院は、同院議員が連邦議会の許可を得ずに連邦議会の会議を15日間連続して欠席した旨、連邦議会議長より報告を受けた場合、定められた方法に則り、当該議員に対する措置をとらなければならない。

第131条
 人民院は議員の一部に空席がある場合でもその任務を執行する権利を有する。また両院の会議に出席する権利を有しない人物が同院の会議に出席の上、投票を行ったことが後日判明した場合でも、当該会議における決定は無効とならない。

第132条
 人民院の職務及び記録は公表される。ただし、法律もしくは同院の決定に基づき制限される職務及び記録は公表されない。

第133条
 ⑴人民院議員は、この憲法及び人民院法の規定に反しない限り、人民院及び同院委員会において自由に投票及び発言を行う権利を有する。当該議員に対しては、同院における言動を理由として、人民院法を除く法律に基づくいかなる措置もとられてはならない。
 ⑵この憲法に基づき設立された連邦レベル機関を代表する委員もしくは人物は、人民院もしくは同院委員会への出席を認められた又は招待を受けた場合、憲法及び人民院法の規定に反しない限り、人民院もしくは同院委員会において自由に発言する権利を有する。当該人物に対しては、同院における発言を理由として、人民院法を除く法律に基づくいかなる措置もとられてはならない。
 ⑶第1項及び第2項で定めた人物が傷害事件を起こした場合、当該人物に対し、人民院の規範、規定及び手続並びに現行法に基づく措置がとられなければならない。

第134条
 ⑴人民院会議に出席している同院議員又は同院議長の許可もしくは招待により同会議に出席している人物を逮捕する必要が生じた場合、人民院議長に確実な証拠を提出しなければならない。人民院議長の許可を事前に得ることなく当該議員もしくは人物を逮捕してはならない。
 ⑵人民院委員会、人民院の組織した理事会及び組織に出席している委員を逮捕する必要が生じた場合、当該委員会等の長を通じて、人民院議長に確実な証拠を提出しなければならない。同院議長の許可を事前に得ることなく当該委員を逮捕してはならない。
 ⑶人民院会議もしくは同院委員会が閉会中の際に、、同院議員を逮捕する必要が生じた場合、逮捕理由を裏付ける確実な証拠を人民院議長に対し迅速に提出しなければならない。

第135条
 人民院によって又は同院の許可を得て出版される報告書、文書及び議事録については、裁判の対象としてはならない。

法案の提出
第136条
 付表1の連邦議会立法管轄事項表にある事項のうち、連邦議会のみが法案を提出し決定できると憲法で規定されている事項を除いて、規定された方法に則り人民院にて審議される。

第137条
 ⑴関係機関は、連邦議会が制定した法律に沿った規則、規範もしくは規約を公布した後、直近の人民院常会の場で、人民院議長が認めた手順に従い、当該規則、規範、規約は議員へ公布しなければならない。
 ⑵規則、規範もしくは規約が他の関係法律に一致しないことが判明した場合、人民院議員は、当該規則、規範、規約等が配布された日から90日以内に当該規則、規範、規約の廃止もしくは修正に関し、人民院にて提議することができる。
 ⑶規則、規範もしくは規約の廃止又は修正を決定する際、人民院と民族院との間で合意に達しなかった場合、連邦議会にて審議される。

第138条
 ⑴連邦議会が、この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関により提出された法案を規定された方法に則り人民院へ送付した場合、当該法案は人民院に提出されたものとみなされ、同院にて審議されなければならない。
 ⑵人民院議員は、連邦議会が立法権を有する事項に関する法案を人民院に提出する権利を有する。ただし、連邦議会のみが提出・決定の権利を有する法案は除く。同院議員が提出した法案は規定された方法に則り、人民院にて協議されなければならない。
 ⑶人民院の承認を得た法案は、民族院に提出され、協議及び決定が為されなければならない。

第139条
 ⑴人民院は、民族院から送付された法案を受領した後、当該法案に賛成するか反対するか、もしくは修正を施した上で賛成するかを決定することができる。その後、人民院は、当該法案を人民院の決定と共に民族院へ送り返さなければならない。
 ⑵法案が人民院による修正と共に民族院へ送り返され、民族院が新たに修正を施したうえで当該法案を人民院へ再送した場合、人民院は民族院の修正案を受け入れるならば、当該法案を連邦議会議長へ提出しなければならない。
 ⑶人民院は、民族院の新たな修正案に反対する場合、連邦議会の決定を仰がなければならない。

第140条
 この憲法に基づき設立された連邦レベルの機関の委員は、
 ⑴人民院議長の許可を得て人民院会議に出席している間、自らの機関に関連する法案もしくは他の事案に関し、説明及び協議を行う権利を有する。
 ⑵人民院の委員会に当該委員会委員長の許可を得て出席している間、自らの機関に関連する法案もしくは他の事案に関し、説明及び協議を行う権利を有する。

※なお、条文は工藤年博編『ミャンマー軍事政権の行方』の補足資料の日本語訳による。

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