成年後見制度~どんなケースで必要になるの?
弁護士は法律の専門家ですが、医療や介護に関しては基本的に素人です。
医療の現場や介護の現場から、弁護士に法的サポートを求めるケースが多かったりもします。
法的サポートを求められる機関の1つとして「地域包括支援センター」が挙げられます。そして、弁護士が「地域包括支援センター」とどのような関わりを持つのかと言いますと、高齢者の権利を守る場面で関わりをもつことが多いです。
ちなみに、「地域包括支援センター」とは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える総合的な相談窓口です。
具体的にどのような場面で高齢者の権利擁護が必要になるかと言いますと、親と子が同居しており、親が認知症であることをいいことに、子供が親の年金を自分勝手に利用しているようなケースです。
年金だけならまだしも、親の預貯金を勝手に引き出しして、遊興費等に使ってしまうようなケースになると最悪です。私が関わったケースですが、数千万の預貯金が、わずか1年ほどの間に数十万円まで減っていたというケースもありました。
認知症の方の場合、通帳の履歴を見てもらっても、とりとめもない回答しかなく、キャッシュカードはどこにあるのか尋ねても、同じようによく分からない回答しかないことが多いです。よくよく調べると同居の子がキャッシュカードを持っていて、勝手に引き出しをしていたことが判明するケースも多いです。
このように子が親の金銭を勝手に使用することは、子の親に対する虐待にあたり、「経済的虐待」と言われます。
親の判断能力がしっかりしているならば、法律的には「贈与」となりますので、問題になりませんが、親が認知症等であるために判断能力に問題がある場合、親が子に金銭を贈与していると軽々に判断できませんので、重大な問題があります。
では、このように判断能力が全くないあるいは非常に乏しい場合に、親の財産をどのようにして守るか。典型的な高齢者の権利擁護の一場面です。
1つの方法として、成年後見制度の利用が考えられます。
成年後見制度は、家庭裁判所の審判によって開始される制度で、後見・保佐・補助の3類型が用意されています。これら3類型は、判断能力の程度により分けられますが、その判断能力の程度は医師の診断に基づいて分けられます。
弁護士が「地域包括支援センター」と関わるの場面の多くは、権利擁護の場面ですが、「地域包括支援センター」か相談を受けるケースで多いケースは、この経済的虐待です。
自身の老後のために、あるいは今後の生活のためのお金が子の遊興費として使われてしまう。これを防ぐための方法の1つとして成年後見制度が非常に有効であります。